WILL 1章6話

炎の鳥

ようやく山頂に辿り着いた一行は、これでこの寒さから開放されると安堵する。

吹雪にも負けず咲いた可憐な一輪の花がそこにはあった。
「あった――花って、これですよね?」

なんだか手折るに忍びないな、と思いつつもルージュが手をのばす。

その頭上に金色のきらめきが舞っていた。
「朱雀……?」
「あれ、さっきの……?」
「ルージュ、そいつは違う!離れるんだ!!」

ジェラスが警告したのとほぼ同時に、炎の鳥はルージュにむかって急降下した。

危ないところでかわしたルージュとすれ違いに剣を振るったアセルスが、 炎のバリアのカウンターを喰らって顔をしかめる。
「熱っ! ダメだ、これじゃ攻撃できないよ!」

ならばとヒューズが撃った銃の弾丸も、バリアに遮られてダメージが今ひとつのようだ。
「炎の体を持つ相手に、光でダメージを与えられるとも思えませんわね……」
「ちょっとジェラス、さっきのもう一度出来ない?」

炎の鳥にしつこく攻撃されて、術に集中できないルージュに心配げな視線をちらちらと向けながらアセルスが言った。

山頂だったら問題は無いはずと踏んだ他の二人も期待を込めてジェラスを見る。
「……すまないが、力を使いすぎたようだ。思うように体が動かない」

ルージュが休息を取っている間も、ジェラスは休むことなく他のメンバーの傷を癒していた。

そのうえモンスターの群れをまとめて片づけるという離れ技をやってのけたのだから、無理もない話だろう。

ひょっとしてこれは絶対絶命大ピンチというのでは、と誰ともなく思ったそのとき。

アセルスの頭上に一条の流星が走った。
「どういう、こと……?」

流星だと思ったきらめきは、黄金に輝く炎に包まれた鳥――朱雀。

四人の頭上を一瞬で飛び去った朱雀は、ルージュをしつこく追いまわしているもう一方に強烈な体当たりをお見舞いした。

二羽の朱雀はしばらくそうして争っていたが、一方が飛び去ると、残ったもう一方がルージュの傍らにふわりと舞い降りた。
「クゥ……」
「どうやら、さっきの朱雀のようだな――ひょっとして、恩返しのつもりなのだろうか」
「……ジェラス、もしかしてどっちがどっちか見分けついてた、の?」

驚くアセルスに、青年はなにやら含みのある笑顔でひとつ提案をする。
「そういえば、先程こいつの事を『かわいそう』と言っていたな、お嬢さん。 炎の鳥を雪山に放り出すのもどうかと思うが――連れて行くか?」

ジェラスは言外に『言ったことには責任を持て』と告げていた。 彼の表情はやたら爽やかな笑顔に見えるが、瞳は笑っていない。

しかし連れて行けと言われている相手は先程まで自分たちが苦戦させられていたほどの相手の同族。これほど心強い味方はいない。アセルスにとって否定の意志などあるはずもなかった。

「もちろんだよ」

ヒューズの出した条件を果たし、盾のカードを手にした一行は 新たな仲間とともに次の目的地へと旅立った。

 

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ロマサガ2・3、サガフロ、天空のクリスタリア、天下統一クロニクル、その他DMMゲームの二次創作(ファンアート)を描いています。
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